デシャン監督の戦略がフランスを優位に導いた
追い打ちをかけるように、ウクライナには、後半開始早々、レッドカードで一人失う、という不運も訪れる。最終的には延長戦PKというシナリオすら蹴散らして、フランスが3-0で堂々と逆転勝ちしてしまった。
試合後、ウクライナのフォメンコ監督は「後悔していることはあるか?」と自国記者から尋ねられて、真っ先に「選手たちの精神状態を整えてやれなかったこと」と答えた。
この試合の場だけでなく、第1レグに勝った直後から、選手たちは動揺していたのだ。
勝負事は、いかに相手より早く風上に立つか、だと、敬愛する雀士が著書に書いていたが、スポーツも勝ち負けの世界。
精神的に風上に立ったフランスがウクライナの選手たちの足を止め、勝機を呼び込んだ。
しかしもちろん、それだけでフランスが勝てたわけではない。
デシャン監督は、この第2レグで、先発メンバーを5人、つまりフィールドの半分を入れ替えているが、この采配が見事にあたった。
システムも第1レグの4-2-3-1より、第2レグの、アンカーを据えた中盤が逆三角形の4-3-3は、はるかに効果的だった。
加えて、それぞれのポジションに据えた人材が適任だった。
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