なぜこのタイミングで強化が始まったのか?
ちなみに、7月にはイタリアの関係者が平壌国際サッカー学校を訪れて選手を視察したほか、北朝鮮サッカー関係者たちは留学に関する様々なアドバイスを受けている。平壌国際サッカー学校を、日本でイメージするならば、福島にあるJヴィレッジを拠点とするJFAアカデミー福島のようなものと考えればわかりやすいだろう。
同校設立には、FIFAの『ゴールプロジェクト』(サッカー後進国への支援)から建設・補修費用が支援され、現在は120人の生徒が学ぶ。定員は約220人となっているが、誰でも入れるわけではない。全国各地にあるサッカークラブに所属する約2000人の中から選抜される狭き門だ。
ただ、気になるのは、なぜ今のタイミングでこのような強化が始まったのか。
「前提として、代表チームが前回の南アフリカW杯に出場したことで、北朝鮮国民のサッカーへの関心が高まったことが挙げられます。ブラジルW杯は出場を逃しましたが、代表チームには世界で勝ってもらいたいという要求が高まっています。
そこで、国が国民の文化生活向上を掲げているのですが、その中にサッカーが大きな位置づけあります。だからこそ、国からのバックアップが大きいのです」
李氏が続ける。
「過去、朝鮮サッカー界はジュニア育成に力を入れてきませんでした。近年の朝鮮のサッカーが低迷している原因がどこにあるのかを議論してきた結果、ジュニアからの育成が大切だという結論に至りました。
今までは各地域の学校のサッカー部は、協会の管理下になく強化に限界がありました。サッカー強豪国には、サッカーに専念できる環境を整えて育成するプログラムがありますが、それを朝鮮でも本格的にスタートさせたということです」
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