不安過ぎる守備陣
再建中のイングランドは、世代交代と共に、ボール支配率を高めて勝つスタイルの確立も目標にしている。だが、問題の「ポゼッション下手」が、一朝一夕に改善されるはずもない。
不用意なロストボールは、ドイツ戦でも、前半のアシュリー・コールや後半のジェラードなど、国産では貴重な「ワールドクラス」のベテラン勢にも見られた。後方からは、足下でこそ生きるダニエル・スタリッジが1トップでも、ジョー・ハートのゴールキックを含め、効率の悪いロングボールが蹴り出された。
結果として、ボールを素早く運んで敵を脅かす手段は、タウンゼンドのカットインや、ロス・バークリーの中央突破など、新世代の個人技に限定されてしまう。
しかし、この両名にしても、プレミアリーグでは、それぞれトッテナムとエバートンのレギュラー1年生であり、代表で頼れるレベルにはない。予選では10試合で31得点のイングランドだが、うち22点は、モルドバとサンマリノの両弱小国から荒稼ぎしたものだ。
同じく、予選での4失点を堅守の証と鵜呑みにしてはいけない。リオ・ファーディナンドとジョン・テリーが、世界最高のCBコンビとまで言われたのは数年前。代表引退を決めた両30代の後釜は、フィル・ジャギエルカとガリー・ケイヒルだが、最終ラインの統率力が先代コンビに及ばない。
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