中央大学で持ち味は発揮されているのか?
「迷ってます。こんなに迷ったことはないくらい毎日迷っている。絶対にサッカーをやるんだと決めた次の日に、就活をやろうかなって思ったり。流れとしては、12月1日からガイダンスが始まり、4年生の4月から内定が出始めるという感じですね。だから、もうそろそろ決めなければいけない」
それは対外的な意思表明でもある。基本的にJリーグのスカウトは、就活を始めた学生に声をかけることはない。この話を聞いているのは、10月30日。たしかにタイムリミットは迫っている。
「自信があれば、こんなに迷うことはないですよね。自分の描いていた成長に追いついていない。自分で納得できるプレーができていない。それが一番大きいです」
ちょくちょく中大の試合を見ていた僕は、プレーを見てのいくらか感想を言うことができた。何かの足しになるとは思えなかったが、少しは元気が出るようなことを言いたかった。
だが、渋谷は出場機会を得たとはいえFWに近い位置でプレーしており、最も彼が活きるはずのボランチでのプレーを見ていない。よって、相変わらず気の利いた動きをするけれども、特別目立ったパフォーマンスではないというのが偽らざる印象である。また、フィジカルは持久力を除き、大学生レベルでも秀でたものはない。
ここで、小林祐希の語っていた渋谷評を引く。
「試合のビデオを見ると、どの場面にも亮は映っている。ボールを追うカメラが右に動いても亮、左に動いても亮。ほんと笑っちゃうくらい出てきますよ。どんなに自分が苦しくても『オッケー』と叫び、チームのために走れる選手。それで周囲と協力して、うまくボールを取っちゃう。おれが中盤で自由にプレーできたのは、あいつのおかげなんです」
つまり、渋谷は仕事探しの名人である。状況に合わせ、そのときに必要なプレーを攻守にわたって感じ取れる。勝つために、身を粉にして働ける。味方同士をつなぐ接着剤のような役割もでき、これはなかなか得難い才能だ。中大の試合を見る限り、その持ち味はあまり発揮されていないように見えた。