日本が目指す攻撃の指標になるような場面
低くて速いクロスを意識することが多い酒井宏樹がここで高めのクロスを選択したのは、ディフェンスラインとGKの距離がそれほど離れていなかったため。そこを通そうとしても、味方の選手が合わせる前にカットされてしまう。高めの軌道ならば、ニアの選手の頭上を越すことができる。
酒井宏樹は「止まっている選手にボールを出しても跳ね返されるだけ」「ギリギリつま先で触るぐらいがいい」と語る。クロスを上げる側は相手の守っていないところに素早く上げることを意識し、そこに味方がタイミング良く走って合わせれば得点につながりやすい。
もちろんベラルーシの様に最初から守備のブロックを作ってくるチームもあり、その場合はシンプルにサイドの裏を突いてクロスを上げることは困難であり、ゴール前に動きが出にくい。ベルギー戦で左サイドバックを担った酒井高徳は「バックパスも使って前後に相手の守備を揺さりぶり、そこから縦を突いた勢いでクロスを出すことが必要」と縦幅を使った攻撃の重要性を説いている。
この得点場面でも、ペナルティエリアの内側に詰めていた香川や清武がもっと入り込んで、相手の守備を分散させれば理想だが、動きの中でのクロスが出てきたこことで、特にゾーンのラインディフェンスを敷く欧州のチームを相手にする場合、非常に有効だろう。「なかなか合わせてもらうのは難しいので、コミュニケーションを取っていかないといけない」と語っていた酒井宏樹だが、こうしたシーンが増えてくれば日本の攻撃バリエーションが広がり、中央攻撃にも活きてくるはずだ。
他にも長谷部の惜しいシュートを演出した香川のショートクロスも、動きのあるサイド攻撃から生まれたもの。「ボールを持っている時は足下だけでつなぐのではなく、スペースに出し、走りながら素早くボールを運ぶ、という様に活動的になること」。ザッケローニ監督は攻撃の“インテンシティ”に関してそう表現したが、サイドアタックからクロスに持ち込む場面もそのことは当てはまる。
そうしたクロス自体が高い得点の可能性を持つが、この得点シーンは日本が目指す攻撃全体の指標になる様な場面だった。
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