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連載コラム 11年前

W杯前に知っておくべきブラジルフッチボール。なぜフッキは日本への帰化を望まなかったのか?

シリーズ:W杯前に知っておくべきブラジルフッチボール text by 田崎健太 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

ウエイトトレーニングなしで作られた屈強な体

 川崎フロンターレにいた2008年3月に、ぼくはフッキをインタビューしている。

 ブラジル人は話し好きである。インタビューでは、幾つか質問をすると、話が止まらなくことも少なくない。

 ところが――。

 フッキはその例外だった。

 とにかく言葉が少ない。生まれ故郷ペルナンブッコ州の訛りで、聞き取りにくい言葉を、ぽつりぽつりと話した。

 例えば、こんな風だ。

――少年時代はどんな風な子どもだったの?

うーん、家が貧乏だった。

――貧乏?

そう、すごく貧乏。

――……お父さんは何をしていたの?

肉屋。

――サッカーはやっていたのかな?

うん。昔はしていたみたい。でもプロにはなれなかった。

 会話が弾まないといっても悪気があるわけではない。彼の肉体的な特徴である大きなお尻を撮影したいと頼むと、にっこり笑ってポーズをとってくれた。語彙がないだけなのだ。

 大きな臀部だけでなく、上腕の筋肉もミドル級のボクサーを思わせるように大きく膨らんでいた。どんなトレーニングをしているのかと聞くと、フッキは「普通に食べて、普通にチームの練習をしているだけ。ウエイトトレーニングは全然してない」と事も無げに答えた。

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