ウエイトトレーニングなしで作られた屈強な体
川崎フロンターレにいた2008年3月に、ぼくはフッキをインタビューしている。
ブラジル人は話し好きである。インタビューでは、幾つか質問をすると、話が止まらなくことも少なくない。
ところが――。
フッキはその例外だった。
とにかく言葉が少ない。生まれ故郷ペルナンブッコ州の訛りで、聞き取りにくい言葉を、ぽつりぽつりと話した。
例えば、こんな風だ。
――少年時代はどんな風な子どもだったの?
うーん、家が貧乏だった。
――貧乏?
そう、すごく貧乏。
――……お父さんは何をしていたの?
肉屋。
――サッカーはやっていたのかな?
うん。昔はしていたみたい。でもプロにはなれなかった。
会話が弾まないといっても悪気があるわけではない。彼の肉体的な特徴である大きなお尻を撮影したいと頼むと、にっこり笑ってポーズをとってくれた。語彙がないだけなのだ。
大きな臀部だけでなく、上腕の筋肉もミドル級のボクサーを思わせるように大きく膨らんでいた。どんなトレーニングをしているのかと聞くと、フッキは「普通に食べて、普通にチームの練習をしているだけ。ウエイトトレーニングは全然してない」と事も無げに答えた。
【次ページ】日本代表へは前向きではなかった