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戸田和幸という生き方(後編)

text by 大泉実成 photo by editorial staff

「みんなそうやって特殊な技能を持って生きていけるわけじゃない」

──そこまで論理的に分析して、しかも自分の意見をきちんと主張する人がめったにいないからじゃないでしょうか。馴れ合うということでいうと、日本社会そのものが感情でつながっていて、馴れ合ってまず仲間の輪に入ることが重視されます。実績を出す出さないがその次にきている。

戸田 それがもともとの日本社会の良さでもあるんじゃないですか。今それがあまりにもなくなりすぎて、みんながプロ化されちゃって、それに適さない人までその渦に巻き込まれて、たいへんな思いをしている。サッカーというものは、プロだからそれでいいと思うんですけど、今はすべてのものがそうなってきちゃってるから。日本の社会の良さを失ってきているように思えますね。

──もともとは母性的な社会なので、仲間の輪に入れれば、かなりダメでもそこで役割を与えられて、何とかやっていける。

戸田 だって、みんながみんなそうやって特殊な技能を持って生きていけるわけじゃないですからね。じゃあ技能がない人は野垂れ死んでくださいではね、誰もこんな国好きにならないし、夢がなくなってしまう。

 僕はもともと社会派のノンフィクションライターだから、サッカー選手と話すときも、つい持論の社会分析が出てしまい、相手をぽかんとさせることが多い。

 しかし戸田はそれに自然についてきて、実に肩の力の抜けた日本人論を展開した。戸田のこうしたクレバーさや適応能力の高さを考えたとき、たとえばこの人が政治家として立ったとすると、どんなことがおこるのだろう、とふと思ったりした。

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