長期的な衰退の危険も?
ただし、問題もあるようだ。国境を接するライバルであるメキシコを注視するアメリカ・MLSのメキシコ担当者は、2ステージ制の弊害を指摘する。一言でまとめると、長期的な衰退にもつながりかねないという懸念が、国内に広がっているという。
プレーオフ進出による商業的なうまみはすでに証明されている。逆に言えば、プレーオフを逃すとクラブには大きな損失となる。全18クラブの半数近い8クラブがプレーオフに進めるのだが、その「うまみ」を逃すまいと、クラブ首脳は躍起になる。その結果、序盤につまずくとすぐさま監督がクビを切られるという短絡的な結果重視の事態につながっているという。
昨季のメキシコリーグを見てみると、監督の自発的な退団だった可能性もあるが、10チームがシーズン中の監督交代に踏み切っている。前期中の交代が5例、後期開幕に合わせて新監督を迎えた例は3つある。
こうした状況では、多くのチームが長期的なスパンでチーム強化を進めていくことが難しくなっている。選手の移籍も激しくなり、育成という面からみても問題があるとMLSの担当者は語る。監督や選手の入れ替わりにより、クラブによっては前後期で違うチームになるような状態だという。
勝利至上主義への傾倒に、ファンはさらに大きな不安を抱いているようだ。「サッカーというスポーツが、本来あるべきものではなくなり、質が低下している」とファンやメディアは声を上げている。さらにはその影響が、リーグを越えて代表チームに波及しているとの批判につながっているという。
来年のワールドカップブラジル大会を目指す北中米カリブ海地域最終予選で、メキシコ代表は10試合を2勝5分け3敗で4位に終わった。オセアニア予選を勝ち抜いたニュージーランドとの11月の大陸間プレーオフに、出場権獲得を懸ける。
ハビエル・エルナンデスら国外でプレーする選手はいるが、ファンやメディアはリーグ戦の質の低下が代表チームの不振につながったと考えている。今回のみならず、ワールドカップ行きを逃すようなことがあれば、マグマのような不満が一気に噴出しかねない。
ファンやメディアからは、通年制を要望する声は絶えず出続けているという。だが、リーグにとってこれだけのうまみを生み出すプレーオフという制度を捨て去ることは、現状では難しいようだ。
続きは『サッカー批評issue65』にて、お楽しみ下さい。