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サッカー本の「診察室」を開いた理由。『夢想するサッカー狂の書斎 ぼくの採点表から』佐山一郎氏インタビュー(その2)

text by 宇都宮徹壱 photo by Tetsuichi Utsunomiya

サッカー情報の過多について思うこと

──佐山さんがこれほど貪欲にサッカー本を読み続けられるのって、かつてサッカーに関する書籍が非常に限られていたことが影響していたと『サミット』に書かれてあって納得したことがあります

佐山 昔は飢餓感というか、肝心な情報が乏しかったですよね。街を歩いていて「サ」ってカタカナを見ただけで駆け寄ったという人もいたような時代でしたから。飢えのもたらす暗い情熱が、今もくすぶっているというのはあるでしょうね。

──似たような話は、大住良之さんからも聞いたことがあります。洋服の生地で「(シア)サッカー」というのがあって、それにぱっと目が行ってしまったとか(笑)

佐山 アイビー時代の凹凸のあるマドラスチェックですね。そういう時代を過ごしてきたから、今でも朝起きるや否やスポーツ新聞のサッカー情報を必ずネットでチェックしますね。しないと気持ち悪くなる。代表戦の翌日とか、『スポナビ』の監督会見全文や選手コメントとか無くなったら、泣いちゃうよ。

──そう言っていただけると、続けてきた甲斐があります(笑)

佐山 わずかな量の選手コメントやベタ起こしの監督会見でも、試合を思い返しながらつなぎあわせていくと「ああ、そういうことだったのか」という感じで謎が解けますよね。そういう調査欲も、情報飢餓の時代を過ごしてきたから湧いてくるんだと思います。

──それはそれでよくわかるんですが、逆に今はサッカー情報の飽食の時代ですよね。正直、容量オーバーになることってありませんか?

佐山 それを感じるのは、むしろ試合映像の方ですかね。国内外の試合を追い切る方がしんどいというか。録画した試合を、前後半の頭の方と最後の15分だけ見ればいいと言う人もいる時代です。とは言っても、録画した試合がたまっていくのが精神的にはきついですね。その点、本は速読が利くし、検索機能も飛躍的に増していますからね。

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