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鉄人の声を聞け プロ20年目の達観――服部年宏(FC岐阜)

text by 海江田哲朗 photo by Kenzaburo Matsuoka

本当にサッカーしかできないアウトロー

――自分の若かりし日と比べて、近頃の若い選手はいかがですか?

「真面目。ほかに言葉が見つからない。若いんだから、もっと遊べばいいのに」

――最近はツイッターなる文明の利器が脅威を与えているのかもしれません。自分たちの頃はなくてよかったと思うでしょ?

「それはまあ、そうだけどさ」

――トラブルの元になりやすいのでクラブ側から指導が進んでいると聞いています。

「アイツ、また遊んでるよ。それでも、すげえゴール決めたぜ。そっちのほうがカッコよくない?」

――男としてのカッコよさでは上です。

「海外で成功している選手がストイックに取り組んで、手本になっているのはいいことだけど、違うタイプが出てきた方が面白いし、健全だと思うんだよね。真面目にできない選手が成功を手にする道もあったほうがいい」

――サッカーでしか救われない人間。

「そう、枠からはみ出しちゃっている子ね。本当にサッカーしかできないアウトロー。生活はぐちゃぐちゃだけど、能力はピカイチみたいな。大卒でJ入りする選手が増えたせいかな。それなりに世間を知って入ってくる。均質化され、無茶苦茶な奴が減った」

――現実問題、派手に遊べないのは自由になるお金が少ないのかもしれません。

「実際、J2の下で試合に出られるかどうかのボーダーにいる選手はプロと胸を張れる金額をもらっていない。そこからのし上がっていくのが大変なのは確か。それにしたって、以前若手に『給料いくら欲しいの?』と訊いたら、『年収1000万が目標。月100万あったら最高っすね』って言うんだよ。それを聞いて切なくなった。代表に入ったらもっともらえるから、そっちを目指そうよと」

――現状をごく当たり前に受け入れている。

「J2の下からキャリアを歩み始めた選手は、本来プロにふさわしい待遇があることを知らない。汚れた練習着をカゴに入れておけば、翌日にはきれいになって返ってくること。専用のジムがあって、好きなだけ筋トレができる環境。そういったものは別世界のことだと思っている。それで現状にあっさり満足してしまう場合がある」

【次ページ】J2の小さな声
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