「本田のプレーは今までの日本人選手が抱えていた悪癖がない」
2012年9月、ぼくは6年ぶりにドゥンガと日本で再会することになった。
直前の9月11日にW杯最終予選の日本代表対イラク代表が行われていた。ジーコがイラク代表の監督を務めていることもあり、試合はブラジルでも中継されていた。ドゥンガは試合をテレビで観ていた。「いい試合ではなかったね」というぼくの言葉にドゥンガは仕方がないと両手を挙げた。
「W杯出場権がかかった試合というのは、重苦しい、厳しいものになるものだ。それでも、日本人選手のクオリティが高いことは分かったよ」
「日本代表の中に気に入った選手はいた?」と尋ねると「本田だ」と即答した。
「彼のプレー振りを見ていると、外国人選手、オランダ人、ブラジル人のように思えるんだ。本田は他の日本人選手の模範となる選手だと思っている。彼のプレーは今までの日本人選手が抱えていた悪癖がない」
ドゥンガが特定の選手を褒めるのは珍しい。中でも日本人選手をここまで褒めたのは記憶になかった。
「技術的レベルで言えば、本田とこれまでの選手との差はそれほどない。本田が優れているのは、メンタル面だ。彼のプレーからは、いつもいいプレーをしなければならないという責任感を感じる。今までの日本人選手と正反対で、彼は強い。何より得点を決めることが出来る。彼は試合の中で〝違い〟を生み出せる選手なんだ」
本田が2014年W杯で優勝を目標にしていると口にしていると教えると、ドゥンガは深く頷いた。
「いいじゃないか! 奴は責任を引き受けようとしているんだ。参加することに意義があるなんて言っている奴は駄目だ。石にかじりついても勝つんだ、そう言える選手は大切だよ」
ドゥンガらしい答えだった。
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