決定機、実はほとんど変わらず
それもネルシーニョ監督にとっては想定内のことだったのかもしれない。76分に増嶋竜也を投入し、押し込まれていた太田サイドの守備に厚みを加える。谷口を置いたのは、守備面もさることながら、本来ボランチである程度のつなぎを見込めると判断したゆえの起用。
後半の柏は5バックの前にダブルボランチ、そして工藤、レアンドロがサイドの守備と、前半以上に守備の色を強めていたため、最終ラインに必要だったのは、ビルドアップ能力や機動力よりも、増嶋のように1対1の強さ、空中戦の強さのあるDFだということになる。
前線はクレオ1枚。そこへクリア気味のロングボールを蹴り、前線で収まればレアンドロ、工藤の飛び出しでカウンターを仕掛けることができる。実際に何本かゴールになりそうなカウンターの場面はあった。柏が守備的に戦い、浦和がボールを回す展開も、決定的なチャンスという部分では、柏も浦和も数はほとんど変わりなかったように思う。
最後、浦和はパワープレーに出てきた。那須や槙野が前線に入っていたが、そこは近藤、渡部、増嶋と中央を閉める柏の3バックにすれば、高さがあるだけに放り込んでもらった方がやりやすかったに違いない。そこのあたりまで、ネルシーニョ監督の術中だったように感じる。
そして柏は見事に逃げ切る。整理された守備、強いメンタリティー、こうしたタイトルの懸かった試合での勝負強さ。それらを存分に発揮し、14年振りのナビスコカップ優勝を手にした。
【了】