浦和を“はめた”戦術
近藤直也と興梠慎三はほぼ1対1で対峙、渡部博文と谷口は基本的には深い位置に入る2シャドーを見るのだが、原口元気も柏木陽介も頻繁に降りる動きを繰り返すため、3バックとダブルボランチの受け渡しのところを明確にできるかが鍵になっていた。
柏はこの形で、浦和の攻撃を完璧にはめ込む。浦和はボールを持っているが、効果的な配給もなく、勝負を仕掛ける縦パスも入らない。仮に縦につけたとしても、必ず柏のマーカーはアタックにいくため、高い位置で収まりどことを作らせなかった。
完全に整理された守備で隙を与えない柏も、攻撃に出ていく時は、当初は茨田が左に流れ、そこで起点を作りながらビルドアップしていく形を狙っていたようだが、あの形を作るキーマンだった大谷と鈴木を欠くことで、攻撃の形は見出せない状態だった。
ただ、柏はそれでも問題なかったのだろう。ある程度守備さえできていれば、そのうちチャンスは必ず来る。その少ないチャンスを確実に仕留める。完全に浦和をはめた守備が、そう物語っているかのようだった。
柏の前半のチャンスは2つ。1本目は前半45分、ジョルジ・ワグネルのミドルシュート。そして2本目が前半アディショナルタイム、藤田優人の低い弾道のクロスに合わせた工藤のヘッドだった。そしてこれが、見事に浦和の守備を破る一撃となる。
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