単なるワガママではなかった「エゴイスト宣言」
徳島戦でも高い決定率を披露した宇佐美だが、この男はとにかく練習中からシャープな振りで、好シュートを連発。「ドイツ時代も別にシュートの精度を高める練習をしてはいなかった」とサラリと言ってのけるが、やはりフィニッシャーとしてずば抜けた天賦の才を与えられているとしか言いようがない。
ただ、「フィニッシャー宇佐美」は怪我の光明がもたらした側面もある。
夏場以降、ロチャや平井らを宇佐美のパートナーとして模索し続けてきた長谷川監督だったが、ロチャはクロス、平井は裏抜けという一芸に特化したアタッカー。
「コンビを組む相手に応じて自分の色を変える」という器用さ故に、宇佐美が引いてプレーする時間帯も多く、必ずしも最前線で怖さを発揮する時間は多くなかったのだ。
「遠藤を前線に置いたのは、ここ2、3試合、誰が組んでも宇佐美のパートナーとしていまいちだったので」と遠藤のFW起用は苦肉の策だったことを認めた長谷川監督。しかしながら、背番号7が最前線でタメを作る役割を与えられたことで宇佐美はFWとして得点へのこだわりを表して行く。
その覚悟が「ワガママにやってもいいのかな」という発言につながっていた。
ただ、誤解のないように言及しておきたいのだが、「ワガママ」というのは最低限のタスクをこなした上でのシュート意識。最前線からのチェイスを怠る時間は明らかに減少しているし、課題だったクロスへの入り方も、成長の跡を見せている。
【次ページ】昇格後の課題は宇佐美のパートナー