有力者が選手を脅迫するセルビア
報告書には、実際に巻き起こった事件について、何人もの選手が生々しい証言を残している。セルビア人のロドリュブ・マルジャノビッチは、以前プレーしていたセルビア国内のクラブ、FKハジュク・クーリャでの出来事について次のように言及している。
「6ヶ月間クラブから給料をもらえなかったため、セルビアサッカー協会を通じて、選手契約を破棄するよう申し出た。するとクラブの有力者が連絡をよこしてきて、要望を引き下げなければお前は殺害されるぞ、と言ってきた。
その有力者は、目的のためなら手段を選ばない人間としてセルビア中で知られている人間だった。クロアチアとの内戦時に彼が所属していた戦隊は、無実の市民を殺害したとことがあるとも言われていた」
マルジャノビッチは、契約破棄が成立するまで、結局8ヶ月を要したという。
旅行者として訪れるには素晴らしい観光地も数多くある東欧だが、サッカー選手として理不尽な出来事が多発する東欧に移籍することは、長くない選手寿命を考えると大きな賭けだ。
その一方で、よりハイレベルなリーグを抱える西欧に近くなるという点において、東欧のクラブでプレーする地理的なメリットは確実にあるだろう。東欧のクラブや代理人の中にも、代表未経験者を含めた日本人選手の獲得に強い興味を示すギリシャ人やトルコ人は少なからず存在している。あるトルコの代理人は、「ドイツをはじめとする西欧への移籍のファーストステップとして捉えてくれればいい」と言い切っている。
触れておきたいのが、こうした地域への移籍の判断においてどのようにリスクマネジメントをしていくべきか、ということだ。
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