トラブルの多い東欧への挑戦
華々しいイメージで描かれることも多い、日本人選手の海外挑戦。しかし中には、戦術的・技術的な理由ではなく、ピッチ外におけるトラブルが原因で帰国を余儀なくされるケースが存在する。
2012年には、クロアチアに移籍した伊野波雅彦はハイドゥク・スプリトから給料が払われず退団(編注:クラブは伊野波に非があると主張)。また、スロバキアのMSKリマフスカ・ソバタに所属していた中村祐輝も、サポーターによる人種差別が原因で日本に帰国した。
平均引退年齢が約26歳とも言われる、プロサッカー選手の決して長くない現役生活。そしてマイノリティーとしての立場を強いられる海外への移籍。慎重を期すべき移籍先の判断はしかし、考慮するには不十分な時間と情報の中で行われることも少なくない。
東欧サッカー界の問題点を指摘した報告書がある。『黒書 東ヨーロッパ~プロサッカー選手が直面する諸問題の調査~』――国際プロサッカー選手会が東欧各国の選手会と手を組んで作成したこの報告書をもとに、日本人選手の東欧移籍に潜む各国のリスクをあぶり出していきたい。
報告対象となっている国は、ブルガリア、クロアチア、チェコ、ギリシャ、ハンガリー、カザフスタン、モンテネグロ、ポーランド、ロシア、セルビア、スロベニア、ウクライナの合計12か国だ。なお、厳密には中欧に当たる国も含まれているが、この稿における分類は報告書に従うものとする。