キャンプから綿密な守備組織の構築を徹底
攻撃面に関しては個のアイディアや自由度を重んじる一方で、守りに関しては一切の妥協を許さずに細かい約束事の徹底をキャンプから継続。今季をここまで振り返ると栃木戦を終えた段階で失点数は計41点で平均失点は1.17。昨年の1.73から明らかな改善を見せている。
ただ、単なる数字上の比較はナンセンスだ。J2でいかに失点を減らしたとしても、それはJ1での「復活」を目指すガンバ大阪にとってあくまでも参考記録。J1のような精度の高い攻撃や強烈な個を持つアタッカーが少ないJ2でいかに失点を減らそうとも、それは来季以降の堅守を担保するものではないのだから。
しかしながら、数字には反映されない面において、攻撃サッカーの雄の泣き所は確かな改善の跡を見せつつある。
「守備に関してはボールを奪われたところからの守備が始まると思っているので、失点は守備ラインだけの問題ではない」と攻守が連動するスタイルを求めてきた指揮官だったが、キャンプから徹底してきたのが綿密な守備組織の構築だった。
長谷川監督が求める守備の大原則はこうだ。
“CBが基本的につり出されることなく、ゴール前でしっかりと立ちはだかる――”
そのために繰り返し行われたのが従来のガンバ大阪に足りなかった守備時のポジショニング意識の浸透だった。
「CBのポジショニングや、CBがつり出された時ボランチがどこに帰るとか、他のどこに戻るとかの約束事は正直、今までのガンバにはなかった部分。相手ボールになってセットした時の守備のポジショニングとかの約束事は多い」と語るのは頭脳的な守備を持ち味とする丹羽だ。
ポジショニングの良さは長谷川ガンバを語る上で欠かせない要素の一つだが、最後尾からチームの動きを把握する藤ヶ谷は、明らかな変化を感じているという。
「僕が後ろで守っていてもこういう状況なら、アイツが敵の攻撃に対してこう出て行くから、僕はここの場所をケアしようと判断しやすいので、GKとしてもやり易さはある。それにDFが戻るポジションや、一人がカバーに行ったら、残りの守備陣はどう守るという共通理解が徹底されている。
今までのガンバなら何でそこに味方がいないのとか、何でそこに食いついて行ってしまうかって場面もあったけど、守備の組織は良くなっている」