ぼんやりしていたチームの守備意識
攻撃サッカーという絶対のスタイルは崩さない一方で、今季のガンバ大阪に求められた確かな変革が、従来はストロングポイントとは言い難かった守備面へのテコ入れだ。
「ガンバのスタイルはリスペクトしていた」と語った1月の新体制会見で長谷川健太監督が同時に、言い切ったチームの課題は守備面だった。
「3点取らないと勝てないというところが、リーグ最多得点のチームがJ2に降格する要因の一つになった」
優勝争いに加わっていてもおかしくない攻撃陣がリーグ最多となる67得点を奪った一方で、失点数は最下位のコンサドーレ札幌に次ぐ65失点。ただ、攻撃過多なスタイルを採用しながらも、西野朗元監督当時からガンバ大阪は必ずしも守備を疎かにしてきたわけではない。
例えば守備だけをテーマにした練習が皆無に近かった西野体制下でも「プレッシング」「高いDFライン」といったコンセプトは常に徹底。山口智や橋本英郎、明神智和らフィールド上の「考える人」たちがその個の能力を最大限に発揮して、守りを整え、そしてしばしば組織の綻びを補ってはいた。
ただ、そんな守備戦術の弱点を、看破していたのが清水エスパルス時代から長谷川監督の右腕としてチーム作りを支えている小井土正亮アシスタントコーチだ。
「今までもガンバにはボールを奪いに行くメンタリティーはあったが、そこで奪えない時にどうゴールを守るというところが希薄だった。去年の試合のビデオを見ていたら『ボールを奪えなかったら、もうしょうがない』って選手が感じているところが正直あった」
注目され続ける攻撃過多なスタイルの最後尾でしばしば無防備な状況下の守りを強いられてきた藤ヶ谷陽介も、冷静に過去の課題をこう語る。
「今までのガンバにも大きな決まり事はあったが、少しぼんやりしていた。グラウンドの中で試合中に選手個々の判断で守ろうという感じで、チーム全体としてはっきりした決めごとはなかった」
そんなチームの改革に長谷川監督は乗り出した。