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日本とタイ、両国で代表GKコーチに。加藤好男が見たタイサッカーの現実と課題

text by 長沢正博 photo by Masahiro Ngasawa

殻を破れないタイ代表の現実

 ただ一人の外国人スタッフとして加藤氏を招いたスラチャイ監督の思いも感じている。

日本とタイ、両国で代表GKコーチになった加藤好男
タイ代表のスラチャイ監督【写真:長沢正博】

「彼から言われました。“タイプレミアリーグは実質始まって4年で、Jリーグは20年も歴史がある。ましてや加藤さんはW杯までやられた。いろんなことを聞きたいし、アドバイスをしてほしい”と。まだ若い(43歳)新鋭の監督なので、彼の成功を後押しできたら最高ですね」

 チョンブリFCにはGKのシンチャビンチャイをはじめ、代表選手が何人も所属している。タイでの指導も3シーズン目となり、タイの選手のポテンシャルと課題が見えてきた。

「例えばシンチャビンチャイは能力から言えばJリーガーとまったく変わらない。素晴らしい身体能力があるし、技術的なものもしっかりしている。経験だって積んでいる。あとは言葉の問題や生活習慣、文化の違いを自分の中に取り込められれば、Jリーグでも十分活躍できる」

 潜在能力を高く評価しているからこそ、現状にどこか歯がゆい思いを抱えている。

「文化的な背景ですかね、今一つ殻を破れない、そういう気がしていますね。どういう例があるかというと、今、タイでベストイレブンと言えるような選手の名前をあげた時に、海外挑戦をしている選手がいないんです。ムアントンユナイテッドのFWテラシルなんか、素晴らしい能力を持っているのに外へ出ない。そこに何があるのか」

「チョンブリの選手たちに聞くと、“Jリーグにはすごく興味がある。できれば行ってみたい”と言う。けど、“じゃあ、いくか?”と言うと、“いや、まずチョンブリで…”と言います。タイの居心地がいいのか。環境を変えてまで、何かを犠牲にしてまでレベルアップに挑戦するとか、サッカーに関しての野心で言うと何かが足りない」

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