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Jリーグ 11年前

財政危機の大分はクラブを存続させることができるのか。青野社長が語る再生への道

text by ひぐらしひなつ photo by Kenzaburo Matsuoka

“弱者の戦法”を選ばなかった田坂監督

 4季ぶりのJ1復帰を果たした今季、9人の新戦力を迎えてチームは始動した。J1での経験豊富な選手を補強しつつも、チーム人件費は4億5千万円。J2時代から1億5千万円増とはいえ、J1では最低レベルだ。予算総額の12億円も、かつてのJ1時代に比べるとおよそ半額に過ぎない。

財政危機の大分トリニータ
田坂和昭監督は就任当初よりクラブの財政事情を理解し、現有戦力を育てながら戦ってきた【写真:松岡健三郎】

 高額年俸選手を擁する他チームとの対戦に向け、開幕前から田坂監督も「J1はJ2に比べ、個の能力の差がより顕著に勝敗を分ける」と覚悟を滲ませていた。だが、11年の監督就任当初よりクラブの財政事情を理解し、現有戦力を育てながら戦ってきた姿勢は、J1に昇格しても変わることはなかった。

 そんな田坂を、青野は高く評価している。J2降格が決まったC大阪戦後に柳田伸明強化育成部長も、田坂の業績について「今季だけで裁定するのはフェアではないと思っている。この3年間をトータルで考えたい」と話した。

 勝ち点の上ではぶっちぎりの最下位だが、内容的にはまったく歯が立たなかったわけではなく、むしろ善戦した試合も多い。ただ、相手に比べてあらゆる局面で少しずつ力不足だった。マークを剥がされ、また剥がし切れず、個の力量差を見せつけられて、紙一重の試合を落としてきた。

 それでも頑として“弱者の戦法”を選ばなかったのは、田坂がそこに価値を見出さなかったからだ。「そんなことをしても何も生まれないし何も残らない」という信念の下、J2時代から培ってきたスタイルを辛抱強く育て、個の強化を目指しながら攻撃的な姿勢を貫いた。

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