ドゥンガが許せなかった日本代表選手の「笑い顔」
ドゥンガに初めて話を聞いたのは、ジュビロ磐田での最後のシーズンとなった、98年のことだ。
「今季はあまりピッチの中で怒らなかったですね」とぼくは話を振った。ドゥンガは「まあね」と面白くなさそうな顔で頷いた。
「チームの人間から、あまり怒ると選手が萎縮するのでやめて欲しいと言われたんだよ。自分としては本意ではないけれど、穏便に意見を言うようにしたんだ」
最初は静かな調子だった。しかし、インタビューが進むと次第に熱を帯びるようになっていた。
「日本代表の試合を見ていると、照れ隠しなのか、失敗をした時に笑い顔のようなものを浮かべている選手がいる。ぼくには信じられない。相手の選手がそれを見てどう思うか?
なめられたと思って、1メートルでもボールを前に進めてやろうと思い切り当たってくるだろう。国を代表して試合をするというのは、大袈裟に言えば生きるか死ぬか、そういう覚悟でプレーしなければならない」
「自分の欠陥、欠点は敵ではなくて、むしろ友達なんだ。自分の欠点に目を瞑って、逃げてしまうと向上心をなくす。自分の欠点をしっかりと見て何が出来るか考えなければならない」
「日本の他のクラブからのオファーはあった。しかし、ぼくはジュビロに愛情がある。ジュビロと戦いたくないので、日本の他のクラブに移籍することはない」
言葉の底には、献身、勤勉、義理といった日本人好みの要素が含まれていた。彼が日本で選手、サポーターから一目置かれていたのは当然のことだったろう。