活かされないカバーニとパストーレ
このシステムにはすでにいくつかの問題点がある。
まず、カバーニの能力が十分に生かされていないことだ。指揮官自身「彼はより真ん中でプレーするのを好むし、おそらくその方が彼の力を発揮できるだろうが、全体のバランスを考えた上でやむを得ない」と認めている。
ただ、右サイドに据えられたカバーニがここまで目立った働きをしているのは、バックラインまで惜しみなく戻る守備への貢献くらいで、フィニッシャーとしての凄さを発揮する機会はほとんど与えられていない。
そしてもう一人、このシステムの犠牲になったのがパストーレだ。アンチェロッティも当初、彼をアタッカーの後ろで起用していたが、頻繁に下がるイブラとの共存に悩んで力を出せずにいたため、サイドにスイッチしたところ、持ち前のビジョンの良さ、パス精度、さらには見かけ以上のスタミナで守備をヘルプと、才覚を発揮して勝利に貢献した。
ところが、現在の4-3-3になってからパストーレの出番は激減。8節のトゥールーズ戦ではついにチームシートからも名前が消えた(メンバー落ちの理由を当初クラブ側は「監督の意向」と発表したが、後になってから「練習中の怪我」に変更している)。
パストーレの良さが現行のシステムでは生かされていないことについて、イタリア人記者がブランに質問をぶつけたところ、指揮官は「システムのせいだとは思っていない」と、彼自身のコンディション不良であると説明した。
この答えに納得した記者はほとんどいなかったが、パストーレほどの戦力を使えないのは、非常にもったいないことだ。
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