アジアだからこそ得られた貴重な経験
その極め付きと呼べる試合がラウンド16の全北戦だ。近藤直也、増嶋竜也、鈴木大輔、渡部博文を並べた最終ラインは、全北の嵐のようなハイボール攻撃を弾き返し、イ・ドングッらと非常に見応えのあるバトルを繰り広げる。
韓国屈指の強豪・全北相手に勝利を収めた2試合は、昨年の蔚山には屈したパワフルなサッカー、あのスタイルを打ち破ったことを意味していた。
昨季のACLは出場するだけで精一杯で、この大会自体の雰囲気すら分からない未知の領域だった。昨年の経験から単に試合のみならず、どのような事前準備をすれば良いのか、アウェイで訪れた異国の地に慣れるためには、どのような心構えで臨むべきか、そのようなピッチ外の要素も経験値として積み重ね、今季の戦いに生かした。
いつしか「アジアを獲る」という目標も芽生えた。それは選手だけではなく、サポーターも同じ目標を持ち、スタジアムや街全体の雰囲気作りから、柏のアジアの戦いを盛り上げ、「柏から世界へ」という言葉も生まれた。
相手にPKが4本も与えられるということもJリーグではまず考えられず、こうしたレフェリングがまかり通ってしまうのもACLならではだ。昨季の初出場時には、Jリーグとの基準の違いや偏ったレフェリングに苦しんできた部分もあったが、「ACLではこういうことは起こる」とジャッジの部分に関しては冷静な姿勢をチーム全体が崩さなかった。
そういう点では、今季の経験も必ず来季以降に生きてくるはずである。
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