「神が人を作り、悪魔がレオンを作った」
ソクラテスとレオンは、同じヒベロン・プレット出身で年もほとんど同じである。コリンチャンス、ブラジル代表でも一緒にプレーしたことがある。
「神が人を作り、悪魔がレオンを作った」
ソクラテスは吐き捨てるように言った。
96年、レオンはシーズン途中からヴェルディ川崎の監督を引き継いだ。ナビスコ杯で準優勝、天皇杯で優勝、翌シーズン序盤で躓き、解任されていた。チームを追い出されたという意識があったのだろう、ヴェルディに辛辣だった。
「私が監督となって窮地にあったクラブを建て直した。それを見て、自分たちだけでも上手く行くと思ったんだろう。ところがどうだ。前年度、カップ戦で優勝を争ったチームが最下位の方をうろうろとしている。ヨミウリクラブはほとんど死んでいる状態だ。クラブの体質に問題がある」
彼の言葉遣いに加えて、端正な顔のせいもあり、他人を見下すような冷たさを感じさせた。
ただ、話を聞いていくと、彼の言葉には裏付けがあることが分かった。
レオンは身長180センチ足らずで、キーパーとしては小柄な部類に入る。厳しいトレーニングを積み重ねても、小さなキーパーは不利である。自分の経験から、同じように身長の低いタファレルに厳しい評価となったのだ。
また、ヴェルディは、レオンを解任した後97年シーズン第一ステージで16位、Jリーグ初年度から優勝を争っていたクラブにとって、初めての二桁の順位だった。そして、この年から長期低迷が始まることになる。
「ブラジルにはいい選手はいる。しかし、戦術が悪い」
彼はブラジル代表の問題点を指摘し始めた。
「あなたがブラジル代表監督ならば、どんな選手を選ぶ?」
ぼくの問いにレオンは鼻で笑った。
「代表監督になんてならないよ。絶対に嫌だ」
ところが、この数年後にレオンは代表監督を引き受けることになる。
【次週へ続く】