予定調和を避け、飽きさせない工夫に悪戦苦闘
──作家としてだけではなく編集者としても本の構成を考えられたわけですが、どういった点を強く意識しましたか?
「権威ある大学の先生なら読書遍歴を並べるだけで成立可能なんでしょうね。だけど、こちらは腐っても業界生活30余年でしょ。予定調和は嫌だし、スクラップ貼のままじゃ工夫がないしで、かなりの難事業でした。工夫ややる気次第でまだまだいくらでも面白く作れるという自信は得られました。
だけど、批評ばかりじゃねえ…。紹介と評価の文章を徹底して書くことで何かを学んだ次は、いったんサッカーを離れて実作に向かいたいです。何せ四六時中読んでいたでしょう。まずは遅い夏休みをとって酸素過多の過呼吸状態を治さないと(笑)。
余情を求めてわざと本の中でしなかった扉写真の説明をこの機会にさせて下さい。第1部は寺山修司さんの著書『書を捨てよ、町へ出よう』の事実上の前書き部分とぼくの『ヘパーデン結節症』の指。第一関節の変形は、おばさんに多いそうですね。ということは、俺は男のおばさんか…(笑)。
第Ⅱ部は、ジーコ監督時代の2005年6月8日に撮ったスパチャラサイ国立競技場(タイ・バンコク)のチケット売り場です。アジア最終予選B組北朝鮮との無観客試合の当日です。
第Ⅲ部は、編集部が持っていた街頭広告で、つり革にぶら下がるシュトルム・グラーツ監督時代のオシムです。そして、本書の半分以上を占める最終第Ⅳ部の扉写真が、ほかならぬ『夢想するサッカー狂の書斎』。フォーカルポイントは地回り中の黒猫ガッティ君の尻尾ではなく、iMacの27インチデスクトップパソコン。モンブランとかの万年筆では書いておりません(笑)。
構成上で意識した点は何でしょうね、…飽きさせずに最後までたどり着いてもらいたいということぐらいでしょうか。話し言葉を混ぜたり、いきなり寺山修司さんに楯突いてみたりで、けっこう苦労しました(笑)」
──今回の本は、とくにどんな人の手元に届いて欲しいですか?
「専修大学MFの長澤和輝選手とか、桃山学院大のGK圍井(かこい)謙太朗選手に。唐突な思いつきで深い理由もないんですけど(笑)、次世代を担う人たちの代表ということで。
あとは、泉下のジャンルカ・トト富樫さんとか? これは相当無理がありますね。どこ行っちゃったんだろう、ジャンルカは。翻訳されて日本人以外にも読んでもらいたいですけど、助成システムの整わない現状では無理でしょうね。そうですね、あとは、ジョン・カビラ氏とか。『送っとくから、なんとかラジオで紹介してくれ~!』、それから石田純一にも。
『俺たち同じ目黒区出身の痴的、否、知的不良同士だろう!(笑)』。あとは旧知の猪瀬都知事ですかね。『猪瀬さん、これが“独りビブリオバトル”というものなのですよ。高校生に紹介してくださ~い!』……むむッ、どうしたことだろう、俺、宣伝したい一心で、急にジャパネットたかたみたいな甲高い声になってる(笑)」