キーマンとなった田中順也の動き
また、右サイドのドリブラー、ラフィーニャに対しても、上記のように中盤の出どころを抑えていたことで仕掛ける回数自体を減らし、仕掛けられたとしても橋本和の対応の仕方が第1戦と比べて見違えるように良く、さらにジョルジ・ワグネルが引いて献身的にサポートをして、「1対2」と数的有利な状況を作り、ラフィーニャの突破をも無効化した。
ただし、守るだけでは準決勝には勝ち上がれない柏には、最低でも1点は必要だった。田中を中盤に下げたことで、必然的に攻撃の枚数が減り、ともすればクレオや工藤壮人が孤立する状況に陥る可能性もあり、この4-1-4-1を攻撃面でも機能させる鍵は田中が握っていた。
つまり、中盤で守備をこなした田中が、守から攻へ切り替わった時に前線へ飛び出し、クレオや工藤をサポートできるかだ。それだけ運動量が問われるし、前線との距離が開いた時などはよりスピーディーな攻め上がりが求められる。
田中は左足シュートの破壊力ばかりが注目されているが、チーム随一とも言える豊富な運動量と「長い距離でもずっとスピードが落ちない」とチームメイトも高い評価を与えるように速さを持ち合わせる。DFのフィジカルコンタクトにも屈しない体の強さもあり、4-1-4-1の攻守におけるタスクをこなすには、これ以上の適任者はいなかった。
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