森編集長のパンツの中
「いや、森さんのパンツなんて誰も見たくないし(たぶん柄パン)、ましてやその中身なんてもっと見たくないよ」と読者の多くは思ったに違いないが、森氏は自分の尻が青かった頃について暴走気味に語り出す。
「編集長としてやって来た情けない話や失態をありのまま綴りたい」として、雑誌として道を踏み外した部分や、自身の失敗を語るという内容である。
どうやら「サッカーメディアを疑え」と題した特集の中に『批評』自身も入っているということらしい。出てくるのは、セルジオ越後氏を(結果として)だまし討ちにしてやり玉にあげた話や、表紙に『「岡田武史」なんて、知らない』と大書して猛反発を受けたこと、そして田嶋幸三副会長のインタビュー記事の中に事実誤認の記述があるとして、日本サッカー協会との信頼関係が崩壊した話……。
いずれも、まさにパンツの中のような話で、読んでいて決して良い気分にはなれない。ただ、温度は伝わった。森氏は今号の取材過程で「業界ゴロのような雑誌」と評されて深く傷付いたらしいのだが、巻頭言にはそうした傷心の反映もあったのかもしれない。
俗に『サッカー批判』と称されているらしい『サッカー批評』が業界で疎まれる理由は分からないでもない。センセーショナリズムを重んじて正義の立場から弾劾することを基本スタンスとしている(ように見える)森氏のやり方は、サッカーメディアらしからぬ立ち位置で、クラシカルな週刊誌のそれに近い。
座談会の中で私はそれを「刺激物」と評したけれど、サッカー業界内に住まう人々にとっては「異物感」と言ったほうが近いかもしれない。
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