日本人監督としてのプライド、東北人としての誇りがJリーグを変える
今シーズンのJ1をベガルタが制したら。日本代表に定着している選手がいないチームのリーグ制覇は、奇跡や快挙として伝えられるに違いない。
だが、日本人監督の評価を高めたいとの野心を抱く指揮官が率い、彼の哲学に共鳴した選手によって、ベガルタは形作られている。「選手のことを考えれば、まだ言いたいことはあるけどね」と手倉森は笑うが、フロントとの共通理解も深まっている。彼らが大きな足跡を記しても、決して驚きではない。
「監督の仕事はサッカーを教えることだけじゃないですよ。人間を動かせなければ、絶対に痛い目に遭う。選手を、フロントを、メディアを、サポーターを、マネジメントしなければいけない。少なくともベガルタ仙台というクラブでは、そこまでの覚悟がなければ監督はできない。こんなところまでやっている監督は、たぶん多くないだろうなと思いますよ。これはもう自分の性分なんだけど、だからこそJ1で勝ってみせたい」
2時間弱にも及んだインタビューで、手倉森は否定を意味する「もう」という言葉を一度も使わなかった。日本人監督としてのプライド、東北人としての誇りが、Jリーグのパワーバランスを塗り替えようとしている。
「もうダメではなくまだダメなら、そこに向上心がある。何かを変えていく力がある」
(文中敬称略)
【了】