コーチングの技術として効果的なスポーツオノマトペ
――「スポーツオノマトペ」とは、あまり聞きなれない言葉ですが、一体、どういうものか教えていただけますか?
簡潔には、スポーツや体育の運動場面で使われる、擬音語・擬態語のことです。特に、スポーツオノマトペは、身体や運動機能の促進・制御に働きかける作用があります。スポーツマンガの描き文字にある、「シュッ」、「ダーッ」などを思い浮かべていただけるといいですよ。「言葉」というより「音」に近いです。
――そのスポーツオノマトペですが、実際、効果にはどういうものがありますか?
まず、コーチングのテクニカルな部分を教える方法として有効活用されています。コーチが適切なオノマトペを使ってスポーツの動きを表現することで、伝達する意味の含有率を高めることができます。
1を言って10のことを伝える効果があるんです。たとえば、野球の長嶋茂雄さんはスポーツオノマトペの達人です。「ビューッと来たら、バシンと打て」というようなアドバイス、文字にしてしまうと稚拙なイメージがありますが、「ビューッ」、「バシン」の音に長嶋さんは絶妙な抑揚をつけていて、さらに音に身振り手振りを連動させることで、選手に精緻な動きを伝えているのです。
また、選手自らがオノマトペを発することで、運動パフォーマンスを促進させる効果もあります。陸上ハンマー投げの室伏広治選手が、ハンマーを投げるときに出す「ンガァァァーッ!」という声。この声によって、本来人間が持っている生理的な制限をはずして、爆発的な力を出しやすくしていると考えられています。