無得点だが可能性は示した
68分に裏に抜け出したロッベンに止めを刺されたあとも、カウンターから右サイドを駆け上がるなど、頼もしさを見せつけた。終了間際の89分にも、深い位置でボールをキープし、左にはたいて前線に駆け上がり、最後まで何かを示そうとしていた。
本田がバイエルンに通用したかどうかをこのゲームのみで判断するのは難しい。CSKAはバイエルンに通用しなかったが、もし本田がCSKAではない他のビッグクラブ、仮にACミランの一員として戦ったのなら、また違った可能性を提示できたかもしれないし、ビッグクラブに所属しバイエルンと戦う本田を観たい、と思わされたのも事実だ。
しかし、このゲームで本田が際立った何かを示すことができなかったのもまた事実である。欧州の舞台で印象を残すには、やはりゴールが必要だ。スタジアムであれ、酒場であれ、夜の賭場であれ、人々はゴールに一喜一憂する。
弱者の立場にあるチームが強者に挑む場合に、弱者側の選手が決めたゴールは、通常の何倍もの価値を生む。そのことを誰よりも理解しているのは、他でもない本田本人だろう。
欧州王者とのチャンピオンズリーグ初戦は完敗に終わり、本田は自分の力を観るものにアピールすることはできなかったが、バイエルン戦、マンチェスター・C戦に限っても、残り3回のチャンスがある。
ミランへの移籍は流れてしまうこととなったが、裏を返せば、グループステージ、ひいてはその先の戦い如何では、ミラン以外のビッグクラブへの移籍の可能性が広がる、ということでもある。
本格化する欧州の戦いに身を投じながら、本田は、新たな未来へと向かう。
【了】