優勝には悲観的な声も
しかし、である。そのエジルは、アーセナルに加わった「この夏唯一」のトップクラスだった。これは、いただけない。
ラジオでもネット上でも、サポーターたちは、「天にも昇る心地」などと、市場最終日の大物獲得に歓喜する反面、リーグ優勝の可能性に関しては、悲観的な向きが少なくなかった。「スーパー」な新戦力も、百人力の「スーパーマン」ではないということだ。
アーセナルは、チームを縦に貫く背骨の強化が必要だと言われて久しい。中央のボランチには、8月29日のマテュー・フラミニ再加入で応急処置が施された。5年前までアーセナルに所属していた元フランス代表には、左右のSBをこなす利便性もあり、契約金なしでの獲得は賢い戦力補充ではあるが、昨季4位をリーグ王者に押し上げる戦力アップとはなり得ない。
後方も、CB陣に補強はなく、エジルと同日にレンタルで獲得したエミリアーノ・ビビアーノは、控えGKでしかない。
昨季プレミアでの失点数はベスト2の「37」と、その守備力はイメージほど脆弱ではないが、アストンビラに敗れた開幕戦で、ローラン・コシールニーとペア・メルテザッカーの両CB、そしてGKのボイチェフ・シュチェスニーまでもが、不用意に身を投げたパニックぶりは気に掛かる。
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