ジーコはブラジル代表監督をやる気はあるのか?
ぼくたちの仕事では時々、答えが分かっている質問をぶつけなければならないことがある。
ジーコが日本代表監督を務めていた時のことだ。編集部から聞いてくれと頼まれた質問があった。
「あなたは将来、ブラジル代表監督になる気はないのですか?」
予想通りジーコは馬鹿なことを聞くなという風に、両腕を広げた。
「やるはずがないだろう」
ブラジル代表監督とは不思議な職業である。ブラジル国民は、自分ならばこんな代表を作ると酒場で口角泡を飛ばしながら論議を交わす。自分好みの代表チームを編成するのはみなの夢である。
一方、ブラジル代表監督を引き受ける可能性のある人間にとっては、それほど魅力のある職業ではない。
――どうしてこの選手を選ばないのか。
ブラジル代表監督は、国内から様々な批判に晒される。
その事を筆者が最初に実感したのは、97年の南米選手権――コパ・アメリカだった。
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