ボールを扱う技術は大差ないが…
8月末に開催されたU-12ジュニアサッカーワールドチャレンジ。海外からFCバルセロナ、リバプールFC、チョンブリFCを招いて行われた大会は、FCバルセロナの全6試合30得点1失点という結果に終わった。U-12世代における育成において、今後改善していくべきポイントはどこにあるのか。
リバプールFCのサッカースクールで、8~14歳の選手育成に従事している日本人コーチがいる。UEFAコーチライセンスBに加えて、大手スポーツデータ分析会社PROZONE社のパフォーマンス分析レベル3の資格を所有するという宇治誠氏は、「大会を日本で観戦したわけではありませんが」と前置きした上で次のように語ってくれた。
「まずU-12世代のボールを扱う技術に関しては、イングランドと日本の選手でそこまでの大きな違いはないと思っています。そしてトレーニング方法自体にも、そこまで大きな差異があるとは思っていません。
アヤックスやバルセロナが実践しているトレーニング方法も、コーチ陣の交流を通じて日本に入ってきているから、トレーニング方法そのものは必然的にある程度似通ってきます」
では大きく異なる点はどこにあるのか。同氏によると、ピッチ上でのプレーの選択肢を『多く発見する』『最適なものを判断する』『素早く実行する』という3つのスキルが、現在の日本のU-12世代には欠けているという。
宇治氏はこの点について、日本の初等教育において、生徒が自身の意見を述べる機会に恵まれておらず、受動的な人間性が形成されやすいことが背景にあると述べる。
同氏はリバプールFCのコーチとしてノルウェーに3度派遣されているが、現地の子供達(ノルウェー語が母国語)は理解出来ないことがあると、たどたどしくても英語を使ってコーチに積極的に質問を投げかけてくるという。
さらに、日本においては世界トップレベルの試合をスタジアム観戦できる環境が限られており、状況判断の重要性やスキルを学ぶ機会が少ないことを課題に挙げている。