何人ものスカウトが惚れ込んだ才能
きっかけは、日本のサッカーファンであれば知らぬ者はいないであろう、あの07年のU-17ワールドユース(対フランス)。映像を取り寄せた某スカウト氏がモロに興奮して私に電話を掛けてきてはこう早口で捲し立てたのを鮮明に覚えている。
「どえらいヤツが出てきたもんだ。大至急この子の情報を調べてくれ!」
以来、このスカウトは絶えず柿谷を見続けてきた。もちろん、事はクラブ戦略の主要事項(メルカート)に関することなので、同スカウト氏からは本稿を書くにあたり、名を明かさぬよう切に要請されている。
だが、言えるのは、この柿谷という才能に惚れ込んだ目利きの男達は何も一人や二人ではないということだ。むしろそうではないスカウトを見出すことが不可能だとさえ言える。
イタリアの某ビッグクラブのブレーン(非公式な立場ながら事実上スカウト部門の総元締的な役割)を務めるスカウトは次のように、柿谷の映像を食い入るように見ながら語っていた。
「(日本サッカー史上)最高の選手になる」
要するに、他の欧州諸国と同様、ここイタリアでも柿谷の獲得を狙うクラブは少なくないとみて間違いないのではないか。もっとも、各クラブのGMたちが「狙っている」と公言することはないので断定はできないのだが、あるクラブは今夏(2013年8月)の獲得をギリギリまで模索していたという確度の高い情報はある。
だが、踏み切れなかった理由は他でもない。もはや慢性化して久しい資金難と限られた外国人枠。この二つが同時にクリアされない以上、当然のことながら交渉すらままならないというのが実情である。
加えて、柿谷本人がセレッソ残留の強い意志を公言しているとの情報も細かく伝えられている。こうした諸々の事情を鑑みて、本格的な獲得へ向けた動きが今はまだ水面下に留まっているのというのが実態だ。