ここ5、6年で最も衝撃的だった若手選手
「こいつはいい」
そう思わず呟く瞬間のあのゾクゾクするような感覚が病み付きになっている一人である私は、取材者としてはもちろん、そうでなくとも時間を見つけてはユースの練習や試合を観に出掛ける。
たとえば05年のルメッツァーネ(伊北部)で15歳のバロテッリを目の当たりにしては、そのメチャクチャな悪童ブリはもとより桁外れのパワーと技術に文字通り絶句するしかなかった。また、同じく北イタリアの片田舎(ブレッシャ)で燻っていたピルロ(当時19歳)のFKは15年を経たいまでも鮮烈に記憶に刻まれている。
そしてわずか数年前について言えば、とあるスカウト氏に誘われて観に行ったのが当時ジェノアの下部組織にいた14歳のエル・シャラウィ。そこでスカウト氏はこう語っていたものだ。
「あと3年でこの子はAに行く。だけじゃない。5年もすればA代表に名を連ねるだろう」
また、身近なところで言えば、筆者の住むフィレンツェにはエリアという名の少年(10歳)がいる。怪我なく順調に成長すればこの子は間違いなく将来の伊代表を背負う選手にまでなってみせるだろう。などなど、他にも同様の例を挙げればきりがない。
とにかく、こうした希有な才能を持つ選手たちに共通するのは「ボールを止める際の姿勢の美しさ」。それは今も昔も変わらない。多くのベテランスカウト達が異口同音にそう語る。
そして今日も、ほぼ毎日のように育成の現場にスカウトたちと一緒に赴いては若い才能を探し歩いているが、ここ5、6年ほどを振り返って最も衝撃的だった選手はイタリア人でもブラジル人でもスペイン人でもない。それは他ならぬ日本人。今やすっかり時の人となった、柿谷曜一朗である。