最初の投資額は8億円。トッテナム会長の商才
そして何より、レアル・マドリーの本気を示す尺度が、史上最高レベルの移籍金ときている。8月に入ると、ベイルの動向を伝える国内紙の見出しは、「9000万ポンド」、「1億ポンド」と、金額規模の大きさが目立つものばかりだった。つまり、「もはや売らない手はない」という論調の表れと解釈できる。
トッテナムのダニエル・レビー会長にとって、放出の可否は、もともと金額次第だったと言ってもよい。ベイルは、商才ある経営責任者の先行投資に対する、過去最高の見返りと考えられる。
レビーが、「英国人プレミアム価格」に目をつけたのは10年ほど前。トッテナムが購入し始めた国産の若手には、現主力のアーロン・レノンやマイケル・ドーソンも含まれている。
だが、彼らの獲得コストは、ウェストハムから引き抜いたマイケル・キャリックの転売収入として、06年にマンチェスター・ユナイテッドから得た約29億円で完全にカバーされている。ベイルの転売に至っては、サウサンプトンに支払った8億円弱の投資に、20倍近いリターンが見込める状態だ。
レビーが商談成立を拒み続けて来た真意も、価格の吊り上げにあるはずだ。一部でマドリーと合意済みと報じられた移籍金は、支払い方法によって、120億円強から130億円強までの差が生じるが、トッテナム側は、支払いが数年間に渡る分割でも、最終的にクリスティアーノ・ロナウドの約125億円を超す商談を望んでいたとされる。
8月最終週に入って浮上した、190億円台の競合オファー説も、最大限の移籍金収入を狙う売り手によるメディア操作とさえ考えられる。
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