【ドイツ】試合中断・中止決定後はスコアに関係なくすべて再試合となる
2008年4月11日のニュルンベルク対ボルフスブルク戦、ハーフタイムのことだ。ブンデスリーガ史上初めて、大雨のために再試合が行われることが決まった。中断した時点ではニュルンベルクが1-0でリードしていたが、規定により、キックオフからやり直すことになった(主審は30分間試合を中断する権利があり、それでも天候に改善が見られない場合は再試合にできる)。
この日はキックオフ直後から大雨が降り始め、ボールが転がらない状態に。ハーフタイムになっても雨足が弱まる様子はなく、22時15分、ドーレス主審は再試合を決定した。
「選手の安全が保証されなければ、試合を続けることはできない。審判キャリアの中で、最も難しい判断だった」
この決定後、ニュルンベルクの一部のファンが「ドイツサッカー協会(DFB)はマフィアだ」とコールしたくらいで、大きなトラブルは起こらなかった。ハーフタイムという早い段階の決断が功を奏したのだろう。
ただし、過去には主審がパニックに陥った試合もあった。1971年4月のボルシアMG対ブレーメン戦のことだ。終了直前まで1-1の同点だったが、88分、勢い余ったボルシアMGの選手がゴールネットに飛び込み、その衝撃でボールポストが折れてしまった。
混乱したモイザー主審は、12分間の中断後、あと2分あるのに終了のホイッスル。後日、DFBは主催側がポストのヒビを発見できなかったとして、その落ち度の責任を取らせてボルシアMGの0-2の負けと決定した。
また、1988年11月のカールスルーエ対ボルシアMG戦では、ボルシアMGの選手の頭に観客が投げたライターが直撃し、交代に追い込まれるトラブルが発生。その日は3-1でカールスルーエが勝利したが、後日、DFBの裁定により再試合を行うことに。1-1の引き分けに終わった。
ドイツ人主審たちはこういう試練を経験して来たからこそ、ニュルンベルクの大雨にも冷静に対応できたのだろう。
文=木崎伸也(サッカー批評45、2009年12月発売)