【スペイン】試合中断・中止は後日。同じ状況からの再開が通例化
スペインサッカー協会の競技規約第298条には、試合中止について「主審が次の理由によってのみ決定できる。ピッチコンディション不良、チームの人数不足、観客の衝突や事件、コレクティブな犯行や試合放棄、やむを得ない事情」と明記されている。
スペインでは現場での試合中断・中止の判断が主審に一任され、その後の対応を競技委員会が担う。細かな規定はないものの逆に柔軟性を持ってケースバイケースで判断されることになり、近年の傾向からすると中断・中止時と同じ状況で試合を再開することが通例だ。具体的に近年の事例を見ていこう。
記憶に新しいのが2007年2月の国王杯ベティス対セビージャの試合。セビージャの得点後に怒ったベティスサポーターがペットボトルを投げ込み、ファンデ・ラモス監督の頭部に直撃。同監督が一時的に意識を失ったことで試合は57分に0-1で中断・中止。
競技委員会は翌3月に中立地ヘタフェで残り33分から0-1で試合を再開(無観客)する決定を下した。2006年1月に行われた国王杯バレンシア対デポルティーボでも、44分にスタンドからコインが投げ込まれそれが副審の額に直撃し流血。主審は即座に試合の中止を決断した。
その後の決定は、44分、1-0からの無観客による試合再開。2試合ともに没収試合(0-3でアウェイチームの勝利)の可能性もあったが、メディアから「敵のユニフォームを着て何かを投げ込み試合を止めれば贔屓のチームが勝てるではないか」との反論もあり競技委員会は試合再開の判断を下している。
物の投げ込み以外では、2004年12月のレアル・マドリー対レアル・ソシエダの試合がテロ組織の爆破予告により87分に1-1で中断・中止。2002年9月にはベティス対レアル・マドリーの試合で、突然照明が落ちるアクシデントがあり前半ロスタイム、1-0で試合中止。いずれも約1ヶ月後に試合再開となり、残り時間でレアル・マドリーが1点を奪っている。
文=小澤一郎(サッカー批評45、2009年12月発売)