ヨーロッパ移民による代表強化
――たしかに以前はFIFAルール(代表選手の2年以上の在住歴)が変更されるほど目立っていました。
「あれは波紋を呼んでいましたね。こっそりやれば、わからなかったんです。カタールは大々的にアピールするなか、こっそりとやっていた国がアフリカのベナンですね。僕はベナンサッカー協会会長と友達でドイツW杯の時に一緒のホテルでいつも朝食をともにしていましたが、彼はアフリカ大陸の帰化事情を教えてくれました。アフリカにはエトーやドログバなんかがいるけど、彼ら以外にも能力の高い選手はいます。ドゥンビアだって柏でプレーしましたが徳島と日本では大きな評価ではありませんでした。それがスイスに行って得点王。いまやロシアリーグ得点王、年間MVPになっています。欧州ではドログバを超える逸材だと言われていて、要するにアフリカは名前じゃない部分があります。
ただ実際アフリカでは自分の息がかかった選手じゃないと代表に選ばないんです。日本だったら『あの選手は活躍しているから選べ』ってなるけど、アフリカでは縁故採用、民族や部族関係があります。極端な話で言うと代理人がいて『この選手を選んだらお金払ってくれるから選ぼうかな』って社会なんですよ」
――ベナンの戦略とはどのようなものだったのですか?
「例えば、アデバヨールはトーゴ代表ですけど、実はナイジェリア人で〝漏れた選手?のひとり。その帰化が成功しているのを見て、俺らもやろうと。コートジボワールやセネガル、ガーナ、マリといった近隣の国からボンボン選手がやってきました。これは推測ですが、政府とも上手くやっていたからパスポートもすぐ発行されたようです。ベナンに帰化選手が多いのは、国外生まれの何の縁もない選手を連れて来たから。ベナン生まれであれば公用語はフランス語ですが、なかにはガーナ生まれでフランス語をしゃべれない選手がいる状況。会長もはっきり言っていましたよ。『黒いんだからわかんねぇだろ』と。そもそもアフリカは国土も国境も適当ですからね」
――帰化選手は何歳ぐらいから連れてくるものなんですか?
「大体10代後半ぐらいですかね。20代もありますが、まず20代を超えると将来性がないので帰化させてもしょうがないんですよ」