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セリエA 11年前

長友が「覚えるのも大変」と語るマッツァーリの戦術。新監督の下でインテルは上位に進出できるのか?

text by 神尾光臣 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

インテルに欠けていたものをもたらしたマッツァーリ

 例えばその長友が言うところの「攻撃的な守備」だが、前半にこんなシーンがあった。インテルから見て左、つまりチッタデッラの右サイドバックがサイドに開いてボールを保持すると、アルバレスがインサイドから飛び出してプレスを掛ける。

 チッタデッラのMFがヘルプに入ろうとすると、そこには長友がアルバレスと入れ替わるように中へ絞り、パスコースを遮ってプレッシャーを掛けるのだ。

 一見大胆なポジショニングだが、彼らが開けたポジションには後方の選手がスライドし、ボールサイドのスペースは閉められている。結局プレッシャーをかけられた選手は出しどころを失い、アルバレスにぶつけてボールはタッチを割った。

 緻密にカバーリングを行い、ボールを取る時にはアグレッシブに前から奪う。しかもフォアプレス一辺倒ではなく、ボールの位置に従い引くべき時にはラインを深く設定し、奪う局面では連動して詰める。こうした組織守備の構築はナポリ、いやレッジーナ時代から続くマッツァーリ戦術の源流をなすもので、近年のインテルに欠けていたものでもある。

 そのようなベースのもとで、個々の選手も伸びる兆しを見せている。ポジショニングの意識が高まったグアリンは周囲と連動して動けるようになり、オフ・ザ・ボールでも良く走るようになったアルバレスは試合中に消えなくなってきている。

 安定した組織守備で真ん中を抜かれることが少なくなったことが相まってか、ラノッキアも失われていた安定感を取り戻しつつある印象だ。

「確実にチームは成長している。もっともチッタデッラ戦では、選手たちは本来やれることの6割しか出来ていなかった」とマッツァーリは上を求める。

 他のクラブに比べると補強も地味になったインテルだが、 才能のある若手を育て緻密な戦術が浸透した暁には、昨季のフィオレンティーナよろしく3位争いに喰い込むことは十分可能と見る。

【了】

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