スアレスを警戒していた吉田だったが…
ザッケローニ監督が「相手がゴールに向かって走っていて、そこにボールを入れられる状態になっているときは、ディフェンスラインを下げて対応するのがセオリーだ」と指摘するように、スアレスのような飛び出しを得意とするFWに対しては、今野のように引いて構えるべきだった。
ともに最終ラインでプレーした酒井高徳も「相手が裏を狙ってきたタイミングでオフサイドを取りに行くのはリスクが高い。麻也君が意図を持ってラインの上げ下げをするように言われているけど、合わなかったのは事実。そこは話し合いの必要がある」と吉田のライン設定にミスがあったことを認めた。
プレミアリーグでスアレスと対戦した経験のある吉田には、相手の怖さが誰よりも分かっていたはず。だからこそ、1失点目のシーンではより慎重になるべきだった。実際、ウルグアイ戦前日にもスアレスという世界的FWをこう評していた。
「サウサンプトンで対戦した時はリバプール自体があまりよくなかった。でも、スアレスだけはヤバかった。ボールが入ってくると怖さがあった。クロスが入ってくる瞬間に体をぶつけてきたり、簡単に言えば日本人やアジアのFWが持っていない感覚を持っている。
プレミアでも少ないタイプだと思うし、南米っぽさがあると思った。日本代表では監督のやりたいサッカーというベースがあるので、あとは局面で個と個の対戦になる。そこでどれだけ止められるか、危ない場面をどれだけなくせるかがDFラインにとって大事なことだと思う」
こう語る彼は、スアレスの特徴をイメージしたうえで、最終的には個のところで封じる考えを持っていた。
しかしながら、吉田はオフサイドトラップに失敗。それを取り返すためにレッドカード覚悟でスアレスに体を寄せに行くわけでも、フォルラン側のカバーに入るわけでもなかった。スピードに課題を抱える選手ゆえに、一度置き去りにされたら思い通りには行かないのだろうが、そのくらいの必死さと覚悟を見せてほしかった。