今後のAリーグに求められることとは?
それでも、昨季のAリーグが今までにない盛り上がりを見せたことに違いはない。その要因は、小野、デルピエロ、ヘスキーのいわゆる“BIG3”の加入による露出の向上、そして設立初年度の快進撃で「オーストラリア・スポーツ史上最高のおとぎ話」と現地マスコミにもてはやされたWSWの成功に負うところが多い。
長いキャリアの中で幾つものクラブを渡り歩いてきた小野伸二をして「今までにない最高の環境」と言わしめるクラブを、1年に満たない期間で創り上げられたことは、Aリーグにとってまさしく僥倖であった。
しかし、AリーグはWSWでのこの強烈な成功体験に浮かれてはいられない。その8年という短い歴史の中で、既に3つのクラブが消滅してしまった負の過去を持つAリーグが、さらなる発展を目指すのであれば、近い将来のエクスパンション(拡大)を避けては通れない。
個人的には、世界の主要リーグと比較して試合数が少なすぎる(現行3回戦総当たりで27試合)という問題をクリアにして、リーグを安定運営するためのAリーグの適正クラブ数は12(同じ方式で33試合まで試合数増加が可能)だと考える。
そうなると、近い将来にWSWと同じような成功体験がオーストラリア(またはニュージーランド)のどこかで、あと2回再現されなければならないが、これは正直なところ非常に高いハードルだ。
WSWの成功は、ウェスタン・シドニー地域だから起こり得た局地的なものであり、WSWのケースのような“ケミストリー”が発生する可能性のあるフランチャイズ候補地を今のところ見出せない。
それでも険しい試練を乗り越えて、12チームでのリーグ運営が実現。観客動員も更に増加して、ACLでオーストラリアのクラブが安定した成績を収められるようになるなど目に見えたレベル向上が見られるようになってはじめて、冒頭のような問いかけにも「盛り上がってますよ!」と胸を張って答えられるようになるだろう。
20年目のJリーグという大先輩の背中をいつか捉えようと必死に追う9年目のAリーグ。10月11日開幕のAリーグを、小野伸二の活躍と併せて少しでも気にしてもらえれば、自称“豪州番記者”としては嬉しい限りだ。
【了】