移籍システムの変更に最後まで反対したヴェンゲル
あくまでも推測になるが、たぶんヴェンゲルも似たような感慨を持ったのではないだろうか。そうでなければ、海外のビッグクラブのみならず各国代表チームからの“誘い”が表面化しようと、あるいはアーセナルがトロフィー獲得に届かない年月が積み重なろうと、イングランド(もちろん、彼がほぼ一から作り上げてきたアーセナル)に、こだわり続ける理由が思いつかない。
彼は明らかに「イングランドを愛し、そこに夢を抱いている」。
一つ例証を挙げよう。今世紀に入った頃、プレミアリーグは、それまで独自に施行していた移籍システム(シーズン中、3月の第三金曜日まで自由に売買できる)を、ヨーロッパ全体に準拠して現在のように改変した。
これは、プレミアが外国人天国と化しつつある実態からしてやむを得ない措置だったとは思うが、ヴェンゲルは最後まで声高に半旗を掲げていた。
「こんなすばらしいシステムを捨てることはないじゃないか!」
そもそも、出来合いの大物即戦力補強を良しとせず、若い逸材の発掘・養成をチーム作りの基本としている姿勢そのものが、昔からの“イングランド流”に他ならない。
また、そこには、最大の好敵手サー・アレックス・ファーガソンをライバル視しつつ、敬意を払い続けてきたヴェンゲルの「イングランドを愛する者としての」矜持すら感じてしまうのだが、いかがだろうか。
【了】