現状ではレギュラー奪取は極めて困難
「ソウタンはとてもクリエイティブなタレントで、技術的にかなり高いレベルにある選手だ。リーガ・エスパニョールでもその高い能力から話題となるに違いない。しかし、改善点もあって特に守備のインテンシティーが不足している」
2-2のドローに終わったFC東京とCEサバデル(スペイン2部)のフレンドリーマッチ後、CEサバデルのハビエル・サラメロ監督は田邉草民についてこうコメントした。
CEサバデルが日本人オーナーとなったことでFC東京との業務提携が発表され、欧州の昨シーズン終了時期の5月末にトライアウトを兼ねた練習参加を行なった田邉が最終的にはスペイン2部での1年間の期限付き移籍のチャンスを得た。
サラメロ監督が「業務提携を結んだということもあり単なるフレンドリーマッチではない重みがあった」と語ったこの試合において田邉は34分に凱旋ゴールを決めるも、個人的には「現時点ではレギュラー獲得は至難の業」という印象を受けた。
その理由は3つあって、まずはサラメロ監督が高く評価する田邉の「高い技術」は日本国内での「巧さ」であって、スペインのようにプレー強度が高いリーグにおいて目に見える形での技術とはならないからだ。それは、残念ながら過去にリーガ1部に挑戦した日本人選手たちのプレーや結果で実証されている。
もう一つは日本人的巧さと関係することだが、奇しくもサラメロ監督が田邉の「課題」として挙げた「守備のインテンシティー」が、スペインで評価される、活躍するために最も必要な要素であるから。
逆説的にスペインのような攻撃的サッカーを志向する国においては、他国以上にボールを持っていない時の動きやポジショニングが高いレベルで要求され、守備のインテンシティーやボール奪取するスキルが本当の意味での「技術」に組み込まれている。
ただ、前線の選手ほどボール奪取、インターセプトの回数は減るため、ボランチ以下のラインでボールを奪うために前線の選手にはハードなプレッシャーやコンタクトが求められる。そうしたアクションがサラメロ監督の言う「守備のインテンシティー」だ。
その意味で、FC東京戦での田邉はボールを持った時のスキルやコンタクトは問題ないが、ボールを持っていない時、守備におけるインテンシティーは確かに改善の余地が大いにあると感じた。