300万ユーロは安い金額ではないが…
まず、本田を夏にとろうというミランの行動は、とりあえずポーズではない。メクセスにモントリーボ、昨年退団したがファン・ボメルなど、近年ガッリアーニ副会長は移籍金ゼロで選手を獲得することに味を占めていた。
そのポリシーで行けば本田も1月獲得にしてもいいはずなのだが、外国人獲得枠は開け、移籍金も用意はしている。300万ユーロという数字も、「仮に12月31日までのレンタルと想定した場合、これが適切な額だと算出した」とガッリアーリは根拠を述べている。
同時期にフィオレンティーナに対して出している、リャイッチ獲得のオファーは800万ユーロ。彼の場合は契約を1年残してこれだから、実質5ヶ月未満の本田に対して、とりわけなめた査定をしているわけではなさそうだ。
もっともこの査定を他がどう見るかは別問題。CSKAは「安い」と言い、フィオレンティーナに至っては公式HP上で「とうてい受け入れられるものではなく、しかも遅きに逸し不適当だ」と怒りを露にしている。それはおそらく、ガッリアーニも分かっている。
そこで交渉の有利に運ぼうとするための鍵が、『選手から得た合意』だ。本田の場合、FIFAの既定通り契約満了6ヶ月前から交渉を行い、遅くとも1月からは移籍。「今出してくれたらウチからお金が入りますよ、1月でゼロになるよりはいいでしょう」とメディアを使いながらポジショントークを仕掛けているのが今のミランの戦略だ。
セコいようだが、これも彼らの処世術である。親会社の経営不振から独立採算制にし、選手の年俸カットや人員削減などやっとの思いで巨額の赤字を相殺した彼らには資金がないが、今まで築いたステータスを武器に選手を引きつけ、それを交渉の理由にしていく。自分たちがビッグクラブである、という自覚があるからこその態度だろう。
「ミランは名門で、ガッリアーニ副会長は優秀なフロントだ。だからといってイタリアの方々は、我々がお人好しだとは思わないことだ。我々は新聞の書くことに左右されない」というギネル会長の発言からは、そんなミランに対する反骨心も窺い知れるようだ。