90分間100%ではやらない
例えば、最近の中村は、「出力のタイミング」というフレーズをよく口にする。「出力」とは外部にエネルギーを送り出す言葉のことである。サッカーで言えば、常に100%の集中力で全力プレーし続けるのではなく、勝負所でパワーを出すイメージで使っているのだろう。現在は、それを意識的に行っているのだという。
出力を意識したきっかけは、コンフェデレーションズカップだった。ブラジル、イタリア、メキシコと言った世界のトッププレイヤー達のプレーを目の当たりして、あるヒントを掴んだという。
「彼らを見て、自分で全部の仕事を頑張ろうとしなくていいと思ったんだよね。ネイマール、ピルロ、エルナンデスもそう。みんな90分間を100%ではやっているわけではなかった。でもしっかりと仕事をする」
――90分間、常に100%で頑張る。
日本では美徳とされるであろう心意気だが、実際の選手の体力は無限ではなく有限である。特に夏場ともなればなおさらだ。さらに中村の場合は、それを意識せざるえない状況に直面した。ナビスコカップ第2戦のアウェイ仙台戦である。ブラジルから帰国したばかりであったにもかかわらず、風間監督は先発としてピッチに立たせたのだ。
「あの仙台戦の強行出場がよかったと思う。自分ががむしゃらにやらなくてもチームってうまく回るんだな、と気付けた。前はセンターバックがボールを持ったときは、相手の間に顔を出すことを繰り返し続けないといけないと思っていた。
でもその動きを少し止めてみたら、逆にいいタイミングでボールが来るようになってきたんだよね。今までも頭ではそれをわかっていたときもあったけど、体が動けるといろいろプレーしてしまっていたから。あのときは、全力でプレーできなかったことがよかった。」