なぜ旭日旗を忌み嫌うのか
筆者はこの旭日旗が日本ゴール裏に挙げられた日、試合前に韓国のサポーターグループ「レッドデビル」の会長にインタビューを試みていた。テーマは日韓のサッカーにまつわるナショナリズムの問題について。
レッドデビル(韓国語で『プルグンアンマ』)は連合体で出来ていて、その連合体の統括役というバン・ウヨン氏は旭日旗について「あってはならないこと」と断言していた。
以前からチャンスがあれば韓国のサポーターに説明したいと思っていたこともここで話してみた。すなわち、旭日旗は単なる軍旗で、旧日本軍が使っていたのは間違いないが、今でも自衛隊でも使っているし、日本では軍事的ではなく文化的なデザインとしても使われているのだが、それでもダメなのかということである。今になって自衛隊旗が批判されても日本人は納得しないだろう、とも。だが、返事はつれなかった。
「被害を受けた側と与えた側では感覚が違うのは当たり前だ。戦犯旗(旭日旗のこと)を見て、屈辱の歴史を思い出さない韓国人はいない」
何人かの韓国サポーターにもこの旭日旗について聞いてみたが、口をそろえて同じ意見が出てくる。
軍国主義日本を想起させるという主張では、ナチスドイツのハーケンクロイツ(鍵十字)が欧州でスタジアムはもとより日常のあらゆるところで法的に規制されていたり、そうでなくともタブーになっていることを引き合いに出されて論ぜられることがある。実際に韓国サポーターのひとりはそれを引き合いに出して日本サポーターを批判していた。
だが、社会的タブーとなっているハーケンクロイツよりも、現在のドイツ軍が現在でも使用しているクロスアイアン(鉄十字)により事情が似ているかもしれない。おそらく、ドイツ代表の試合で、ポーランドやオーストリア、ましてやイスラエル相手にこのエンブレムをサポーターが掲げたら、かなりの問題になるに違いない。
実際の軍関係者以外がこのクロスアイアンをかざしているというのは極右かネオナチとみなされても仕方ない。日本ではファッションや遊びでミリタリーは通用するが、これが世界に出ると極めて危険なふるまいとみなされることがある。
おそらく韓国のサポーターがいう理屈の方が、感情的な問題で筋が通らないことかもしれないが、国際的にはフィットする主張だと思われる。いずれにせよ、トラブルになることを承知しながら挑発の意味で出すことは大人げないと言わざるを得ない。