「本田は獲得に値する選手だ」
ジーコの怒りももっともだ。ただ、それよりも気になったのは、所得税はどうなっているのかということだった。ジーコの年俸は軽く億を超えている。ジーコはぼくの問いに答えずに、まくし立てた。
「ここでは〝干渉〟がひどいんだ。どの選手を起用するか、どのような戦術をとるのか、口を挟んでくる人間がいる。もっとも、そんな人間は世界のどのクラブでもいた。ただ、この国では権力のある人間が口を挟んでくるんだ。
彼らは自分たちが金を払っているのだから、その権利があると勘違いしている。ぼくは、コミュニケーションは歓迎するが、干渉は受け付けない。それが認められないならば、とっとと辞めて帰るつもりだ」
この予言通りか、この数ヶ月後にジーコは監督を解任された。本田がCSKAにやってきたのはその直後である。
後にジーコに話を聞いたところによると、解任前にフロントの人間から本田の獲得について意見を求められた。ジーコは「獲得に値する選手だ」と答え、契約締結に至ったという。
問題はあるとはいえ、CSKAモスクワは金銭的に裕福なクラブである。そのため、ジーコと同時期、ワグネル・ラブ、ダニエル・カルバーリョとブラジル代表クラスの選手が所属していた。
ロシアに限らず、サッカーリーグが存在する国にはブラジル人がいると言ってもいいだろう。彼らの移籍に対する考え方は日本とかなり違っている。
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