活躍を見せた新星リンガード
しかし、その緩い雰囲気も後半に入って一気に吹き飛ぶ。多少の選手の入れ替えが功を奏したのか俄然動きが良くなったオールスターが52分、一昨年の得点王ベサート・バリシャのゴールで1点を返す。しかし、そのわずか3分後の55分には、この日絶好調のリンガードが強烈なゴールを叩きこみ、ユナイテッドが再び突き放す。
そして、この日スタジアムが一番湧いた瞬間が訪れる。62分、モイズ監督が満を持して送り込んだのは千両役者のファンペルシ。そのファンペルシは、70分に自らのCKでウェルベックのゴールをアシスト。87分には自らのとどめの一振りで、30分弱の出場で1ゴール1アシストときっちり主役としての仕事を果たし会場を沸かせた。
ユナイテッドは、モイズ監督の初勝利を5得点の大勝で飾り、満員の観衆に名門の底力を見せつけた。試合後のモイズ監督は、淡々と試合を振り返りながら、それぞれ2ゴールを挙げた若いウェルベック、リンガードの活躍を称えた。
この日のリンガードの出来は素晴らしく、二点目のシーンで現地中継の実況が「この名前を覚えておこう、ジェシー・リンガード!」と叫んだように、その活躍のインパクトは大きかった。
ユナイテッドの今回の来豪で、オーストラリアのサッカー界は、満員の観衆にサッカー人気のさらなる向上の可能性を見出し、オーストラリアと本場欧州の彼我の現実的なレベル差を感じ取ったことだろう。これは非常に得難い経験で、それだけでも名門クラブを大枚をはたいて招致したかいがあったと言える。
とはいえ、観衆のほとんどすべては、そんなことはともかく、ユナイテッドの5発と名門を今後長く支えるであろう“新星”誕生の瞬間を目撃できたことを口々に語りながら、大いに満足して家路に着いたことであろう。
かくして、マンチェスター・ユナイテッドのオーストラリア滞在は幕を閉じた。この原稿がアップされるころ、彼らは香川真司の凱旋となる日本への空路、太平洋の機上にある。日本の皆さん、とくとマンチェスター・ユナイテッドを満喫あれ。
【了】
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