岡田武史が見た、中国足球の現在地
では、当の岡田はどう思っているのだろう。アネルカ擁する上海申花に、ホームで惜しくも1‐1で引き分けた2日後の2012年4月9日、岡田はわれわれの取材に応じてくれた(インタビューの内容は、地元スポーツ紙の『体壇周報(たいたんしゅうほう)』に掲載されたものを転載している)。
まずは、自身が求められている役割について、どう捉えているのかを聞いてみることにした。
「ここのオーナーの宋謝平(そうしゃへい)さん、不動産会社の会長ですけど、彼が言うには『どうにも今の中国サッカーに満足できない』と。みんなで守って、前に外国人を置いて、どーんと蹴ってというサッカーではなく、日本みたいなサッカーをやりたい。もちろん、日本人を呼ぶというリスクはあったけど、それでも僕を呼んだと。そういう意味で、すごくやりがいは感じています」
一方で「外国人監督」という自身の役割についても、冷静に分析している。
「中国社会は人と人とのつながり、人脈がものをいう社会なんです。それはサッカーについても同様で、例えば監督が上海の人間だと、上海の選手を優遇するとか、そういう『閥』みたいなものがある。で、選手と面接して皆が言うのは『岡田さんが来て、何が良かったかというと、力でメンバーが決まることだ。そのほうがフェアでいい』と。僕らからしてみれば当たり前なことが、中国人同士だとまったく悪気がない中で、まかり通ってしまうんですね」
では実際に指揮してみて、中国サッカーはどう映るのか。とりわけ気になるのが、国内リーグのレフェリングのレベルとプレーの質である。岡田は「中国=ラフプレー」という画一的な見方に対して異なる見解を示した。
「八百長事件のこともあって、今年から若いレフェリーに全部変わったんですよ。確かに若いから、判断ミスとかあります。それでも非常に冷静だし、態度もいいですね。それとラフプレーですが、中国のサッカーは確かにガンガンくるプレースタイルなので、どうしてもそういう場面がある。あと、キレる選手が練習中でもいますね。でもそれは、レフェリングよりも指導の問題だと思います。国安とFC東京の試合もポポヴィッチがすごく激怒したようですが、僕はTVで見ていましたけど、あのレフェリーはすごくよく見ているなと思いましたよ。一方的に『汚い』『乱暴』と言うのは、何か思い込みがあるんじゃないですか?」